デブ、心から。

 最近とてつもなく太った。自分でも驚いている。この文章はどうか各々頭の中でデブの声色で再生してほしい。ドスコイ。

 俺は太らない体質だと思っていた。実際、太ったことは今まで一度もなかったしここ20年そこそこずっと細身の病弱ポジションを手厚く守ってきた。まさかここにきてこの慣れたポジションから転向を通告されるとは思ってもいなかった。

 2年前東京に越してきたとき俺の体重は48kgだった。そして先日更新された記録は56kg。はじめてBMIが「普通」になった。普通て。もうちょっと俺に興味のある素振りを見せてほしいBMI。

 これを読んでいるみなさんの心中お察しするに

「太ってねえじゃねえかヒョロガリ、自逆風自慢か?」

 という罵倒の声が聴こえてこないばかりだけれど、当人としてはこんなに恐ろしい自体はないのだ。

 バブルが崩壊したと同時に生まれ落ちた俺は日本経済と共に低位置で些細な変動を起こしながら体重を守ってきた。「景気上昇の見込み」とあればやれリーマンショックだ。サブプライムローンだ。と上向く頭を殴りつけられ、デフレスパイラルと一緒に人間性を捻じ曲げながら育ってきた。

 寝る前にチャーハン食べながらビール飲んで挙句マックデリバリーを頼んでも全く太る予兆を見せなかった。父も母も瘦せ型。体重に関しては一生心配なんかいらないと思っていた。

 それが急に8kgの増量。人に会うたびに「太っていくね」と言われるし、人に「会うたびに太っていくね」と言われる。俺の身体の中のアベノミクスが効果を発揮し始めているのだ。

 ともすればこんなに恐ろしいことはない。今までフラットを保っていた経済グラフが急な上昇志向を見せる。上がり始めたとあらばどこまでつけあがっていくかもわからない。自分の伸びしろが怖い。

 しかし原因はわかっている。毎日トンカツとラーメンを食べていたせいだ。トンカツラーメンラーメンラーメントンカツラーメントンカツトンカツ。そういう生活。ドスコイ。

 東京の物価は高いと思われがちだが、実際に高いのは地価であって、飲食店なんかは価格競争からか顧客の多さからか田舎よりも安価なのだ。具体的にはうちの隣のトンカツ屋は定食600円。ラーメン屋は500円から650円ほど。

 そうもなってくると、ちょっと家で料理作るのが面倒だったり出先でおなかがすくとヒョコっと暖簾をくぐる習慣がついてしまう。

 バンドをしなくなってから運動もめっきりしなくなった。学生の時と比べてすこしばかり裕福になったので、外食に頼りがちになっている。おもえば貧乏学生だった頃は焼肉屋の看板なんか目に入らなかった。だって、自分に関係がなかったから。焼肉屋に入れるようなお金を持っていなかったので脳が自然に情報を遮断していたのだ。それが今になって、街中の飲食店の看板が目に入るようになってしまった。街がまるごと全部うまそうだゾ。

 イチローが「体についた脂肪は落とせても、心についた脂肪はなかなか落ちない」と言っていた。よくわからんけど説得力がすごい。

 たぶん、太る原因は精神の肥満なんじゃないか。「ラーメン食べたい」その気持ちが湧いてくること自体がデブ。心がデブ。心が太ったままでは、無理して食べる量を減らしたり運動したり、そういうダイエットをしてもまた逆戻りなんだろう。

 欲自体を小さくしていくことが一番正しいダイエットであって、食事制限や無理な運動やダイエット本なんていうのは小手先の気休めなんじゃないか。臭いものに蓋だ。デブのコルセットだ。

 なんかそれらしい言い訳が完成したので、俺はラーメン食べてこようとおもいます。それでは。

-雑記

1991年8月4日生まれ。獅子座のO型。